採用動画と採用マンガの違いは?中小企業がどちらから始めるかの決め方

採用に何か新しい形を足したい。そう考えたとき、まず思い浮かぶのは動画です。そこへ「漫画という手もある」と聞くと、どちらが自社に合うのか分からなくなります。
この記事は、建設・製造・運送・介護などの中小企業の社長に向けて書きました。採用動画と採用マンガの違いを表で整理し、どちらから始めるかの判断の流れを示します。ビジコミックは漫画の制作会社なので、漫画に寄って読めてしまわないよう、動画のほうが向く場面もはっきり書きました。
目次
採用動画と採用マンガは、何が違うのか
動画は「目の前にあるもの」、漫画は「頭の中にあるもの」
違いを一言で言うと、動画は映せるものを見せ、漫画は映せないものを見せる形です。
動画は、工場の機械の音、現場の広さ、社員の話し方や笑い方をそのまま伝えられます。実際に働く人の顔と声が出るので、「ここにこんな人がいる」という実感を持ちやすい形です。
漫画は、カメラに映らないものを描けます。20年前に社長がなぜ独立したのか、若手が最初の現場で何に戸惑ったのか。こうした気持ちや過去の場面は、撮影では再現できません。逆に、現場の空気感や声の調子は、絵では動画ほど伝わりません。
どちらが上というより、得意な中身が違う道具だと考えると、選びやすくなります。動画で映せないものは、漫画で描く。漫画で出せない音と動きは、動画で見せる。この分担が、選ぶときの出発点です。
見られ方も違う。動画は再生、漫画はスクロール
見る側の動きも違います。動画は、再生ボタンを押してもらい、一定の時間つき合ってもらう形です。漫画は、画面をスクロールしながら、自分の速さで読み進める形です。
総務省の「令和7年版 情報通信白書」は、「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(2024年)をもとに、YouTubeの利用率を整理しています。10代から50代までは各世代で8割を超え、60代でも7割を超えています。動画を見る習慣そのものは、幅広い世代に広がっています。
ただし、これは動画サービスの利用率です。採用動画が見られる割合を示す数字ではありません。
動画には、音が出せない場所では伝わり方が弱くなるという弱点があります。電車の中や休憩室では、音を消して見る人もいるでしょう。字幕を付ければ補えますが、その手間は制作に含めて考える必要があります。漫画は、最初から文字と絵で成り立っているので、音がなくても読めます。
9つの項目で並べて比べる
違いを項目ごとに並べると、次のようになります。
表は横にスクロールできます
| 比べる点 | 採用動画 | 採用マンガ |
|---|---|---|
| 伝えやすいもの | 現場の音・動き・人の表情、職場の広さ | 考え方、迷い、過去の出来事、仕事の背景 |
| 苦手なもの | 本人の頭の中、過去の場面の再現 | 声の調子、現場の空気感、動きの細かさ |
| 作る手間 | 撮影日の調整、現場の段取り、編集 | 取材、脚本と絵の確認 |
| 撮影の要否 | 要る | 要らない(取材は要る) |
| 社員の出演 | 出演が前提になりやすい | 出演せずに登場人物にできる |
| 修正のしやすさ | 撮り直しが必要になることがある | 絵やセリフの手直しですむことが多い |
| 使える場所 | 採用ページ、動画サイト、SNS、説明会の会場 | 採用ページ、求人サイト、SNS、冊子、説明会 |
| 見られ方 | 再生してもらう。音なしだと弱い | スクロールして読む。音なしでも成り立つ |
| 作り直し | 人が辞めたり職場が変わると映像が古くなる | 登場人物を似顔絵や架空の人物にしておけば影響が小さい |
修正のしやすさは「何を直すか」で変わる
漫画でも、ページ数が増えるほど描き直しは重くなります。動画でも、字幕や色の調整ならすぐ直せます。表は、よくある傾向として見てください。契約の前に、直せる範囲と回数を制作会社に確かめておくと安心です。
動画が向く場面、漫画が向く場面
動画が向くのは「現場そのもの」が売りのとき
動画が向くのは、見てもらいたいものが目に見える場合です。
- 現場の迫力が分かりやすい(大型の機械、広い工場、建設現場の高さや規模)
- 職場が明るく、清潔で、見せることが強みになる
- 社員が自然に話せて、その人柄が魅力になっている
- 「実際に働く人が出ている」ことが信頼につながる
動画のほうが向く場面は、はっきりあります。たとえば、新しい工場の設備や職場の広さを見せたい会社が漫画を選ぶと、絵に描き起こす手間をかけたわりに、実物ほどの説得力が出ません。
漫画が向くのは「撮れないもの」が売りのとき
漫画が向くのは、見てもらいたいものがカメラに映らない場合です。
- 社長の創業の思いや、会社の考え方を伝えたい
- 仕事の大変さや、先輩のつまずきと成長を伝えたい
- 職場の撮影が難しい(個人情報、機密、安全上の理由で撮れない)
- 社員が顔を出すことに抵抗がある
介護の現場や、顧客の情報を扱う仕事では、撮影そのものが難しいことがあります。撮れない事情があるなら、それは漫画を選ぶ理由として十分です。撮影できないことは、採用で不利になる欠点ではありません。
POINT迷ったときの目安
- 見せたいものが「目に見える」なら動画
- 見せたいものが「考え」や「過去」なら漫画
- 撮影や出演に制約があるなら漫画が選びやすい
- 現場や設備の迫力が売りなら動画が選びやすい
どちらでも成り立つ場合は、手間で決める
どちらでも伝えられる中身もあります。「入社1年目の先輩の一日」は、動画に撮ることも、漫画に描くこともできます。
こういうときは、自社の手間と制約で決めて構いません。撮影日に社員を集められるなら動画、日程が合わせにくいなら漫画、という考え方です。
作る手間と、修正のしやすさ
撮影の要否と、社員の出演
動画で一番ネックになりやすいのが、撮影日の調整です。現場が動いている日に、カメラを入れ、社員に時間をもらい、同じ話を何度か撮り直す。小さな会社ほど、この数時間を空けること自体が負担になります。
出演する社員の気持ちも大切です。話すのが苦手な人、顔を出したくない人もいます。出演は強制できませんし、辞めた後の映像の扱いも決めておく必要があります。
漫画は、撮影日が要りません。その代わり、制作側が話を聞く取材の時間が必要です。登場人物は似顔絵にも架空の人物にもできるので、出演者の都合に左右されにくい形です。
作る前の準備にも差があります。動画は、撮りたい場所の許可、出演者の確認、当日の動線を先に決めておく必要があります。漫画は、誰の話を、どの場面で描くかを文章にしておくと、取材の時間が短くなります。どちらも、社長が自分で全部やる必要はありません。担当者を1人決めて、制作会社との窓口にするだけでも進み方が変わります。
修正と作り直し
公開した後に変更が出るのは、よくあることです。社名の表記、制服が変わった、社員が退職した、拠点が増えた。
動画の場合、映像に写った人や場所が変わると、その部分の撮り直しや差し替えが必要になることがあります。漫画は、絵やセリフの手直しですむ場合が多い一方で、ページを大きく変えると描き直しになります。
どちらの場合も、修正の範囲と回数を、契約の前に決めておくことが大切です。
注意退職した社員が出ている映像・漫画
実在の社員を出す場合は、退職後の扱い(公開を続けるか、差し替えるか)を、本人と先に話しておきます。動画は顔と声が残るので、特に決めておきたい点です。
費用は、見積もりの出し方が違う
費用は、制作会社や内容で大きく変わるため、この記事では金額を書きません。見積もりを見るときは、動画なら撮影日数と編集の範囲、漫画ならページ数と取材の回数が、総額に影響する要素になります。漫画の費用の見方は、採用マンガの費用相場と、見積もりで確認したい5つのポイントにまとめています。
どちらから始めるかの判断
5つの問いで、自社の状況を確かめる
まず、次の5つに答えてみてください。「はい」が多い側が、始めやすい形です。
CHECK5つの問い
- 伝えたい中心は、現場の雰囲気や人柄である(はい→動画 / いいえ→漫画)
- 社員が顔と声を出すことに、前向きな人が複数いる(はい→動画 / いいえ→漫画)
- 職場は、撮影しても問題がなく、見せたい場所がある(はい→動画 / いいえ→漫画)
- 撮影日に、現場や人の時間を空けられる(はい→動画 / いいえ→漫画)
- 仕事の中身が、外から見て分かりやすい仕事である(はい→動画 / いいえ→漫画)
5つのうち、動画側が4つ以上なら動画から、漫画側が4つ以上なら漫画からが目安です。分かれたら、次の流れで考えます。
判断の流れ
迷ったときの判断の流れ
- 目的を決める応募を増やしたいのか、会社の理解を深めたいのか、辞退を減らしたいのかを決める
- 撮れるかを確かめる職場の撮影、社員の出演、撮影日の確保が現実にできるかを確かめる
- 伝えたい中身を分ける目に見えるものは動画、目に見えないものは漫画に寄せる
- 制約の少ないほうを1本作る無理なく進められる形を、まず1本だけ作る
- 反応を見て2本目を決める見られた数や面接での反応を見て、足りない部分を別の形で補う
目的で見ると、選び方はこうなる
業種のほかに、何のために作るのかでも向き不向きが変わります。
- 会社を知ってもらう入口にしたい: まだ興味のない人の手を止めるには、短く見られるものが向きます。動画なら冒頭の数秒、漫画なら1コマ目で、誰の話かが伝わるかがポイントです。
- 仕事の中身を理解してもらいたい: 現場が見て分かる仕事なら動画、外から見えにくい仕事なら漫画が説明しやすくなります。
- 入社前の不安をやわらげ、辞退を減らしたい: 先輩の迷いや失敗を知ってもらうには、漫画が合います。職場の人柄を見て安心してもらうには、動画が合います。
どの目的でも、作った形が合っていたかは、面接で聞かれる質問や辞退の理由で確かめられます。数字が取れなくても、その変化は拾えます。
業種ごとの考え方の例
ここからは、あくまで目安です。会社ごとの事情で変わりますので、自社の状況に合わせて読み替えてください。
表は横にスクロールできます
| 業種 | 動画が使いやすい点 | 動画で気をつける点 | 漫画が使いやすい点 |
|---|---|---|---|
| 建設 | 現場の規模や高さが伝わる | 施主の敷地や安全面で撮れない場面がある | 一人前になるまでの過程を描ける |
| 製造 | 設備や作業の迫力が伝わる | 機密や設備の都合で撮れない場所がある | 技術を身につける気持ちの変化を描ける |
| 運送 | 運転の様子や車両が伝わる | 走行中は撮影できない。ドライバーの時間が合わせにくい | 一日の流れや、仕事のやりがいを描ける |
| 介護 | 職場の雰囲気や人柄が伝わる | 利用者の映り込みや個人情報に注意が必要 | 利用者を映さずに、仕事の場面を描ける |
両方使う組み合わせ方
動画で見せて、漫画で補う
すでに採用動画がある会社は、撮れなかった部分を漫画で足す方法があります。動画で職場の空気を見せ、社長の創業の思いや先輩の成長は漫画で描く。それぞれが得意なものを担当します。
漫画で入口を作り、動画で確かめてもらう
もう一つは、順番で分ける考え方です。漫画を求人票の近くに置いて、興味を持った人に続きを見てもらう。その先で、動画で実際の職場や人を確かめてもらいます。
<組み合わせの例(架空)>
運送会社の求人ページに、新人ドライバーの一日を描いた漫画を置く。最後に「実際の営業所を見てみる」というリンクを付け、社員のインタビュー動画へつなぐ。
同じ取材を、両方に使い回す
動画も漫画も、元になるのは社員や社長の話です。同じ時期に取材をして、動画の構成と漫画の脚本の両方に使えば、聞き取りの負担を重ねずにすみます。
両方の形を一度に作るのが難しければ、先に1本作り、その取材メモを2本目に使う形でも構いません。
1本しか作れないときは
予算や時間の都合で、1本しか作れない会社がほとんどです。その場合は、「やめたほうがいい形」を先に消すと決めやすくなります。撮影が現実に難しいなら動画を外し、社長や社員の考えを伝える材料がないなら漫画を外す。残ったほうを、小さく作って使ってみます。
最初の1本は、完璧でなくて構いません。使いながら「ここが足りない」が見えてくるので、2本目の形はその時に決めれば間に合います。
なお、ショートドラマやSNS、ゲーム形式の診断まで含めた「採用とエンタメ」全般の比べ方は、採用にエンタメは効く?手法を比較した記事で扱っています。この記事は、動画と漫画の2つに絞っています。
よくある失敗
目的を決めずに作る
「周りがやっているから」と作り始めると、完成した後に、どこで使うのかが決まりません。採用ページの奥に置いただけで、誰にも見られないままになる例は珍しくありません。作る前に、誰に、どこで見せるのかを決めておきます。
社員が出られないのに、出演前提で進める
動画では起きやすいつまずきです。撮影の直前になって、出演を断る社員が出てきます。企画の段階で、出てくれる人の目星をつけておかないと、計画が崩れます。
注意出演のお願いは、断れる形で
出演は本人の意思に任せます。断った人が気まずくならない形でお願いすることが、現場の雰囲気を守ることにもなります。
形の得意不得意を無視する
「雰囲気を伝えたい」のに漫画にする、「社長の考えを伝えたい」のに映像だけにする。これは、形と中身が合っていない失敗です。迷ったときは、先ほどの5つの問いに戻って確かめてください。
条件の説明を、動画や漫画に任せる
給与、休日、勤務地のような条件は、動画でも漫画でも正確に伝えにくい部分です。条件は求人票や採用ページの文字で書き、動画と漫画は、その手前で興味を持ってもらう役割にします。求人票の書き方は、求人票の書き方の記事も参考になります。
作って終わりにする
公開した後に、見られた数や、面接での反応を確かめない例もあります。ただ置いておくだけでなく、面接で「見ました」と言われたか、辞退の理由が変わったかを、簡単にメモしておきます。
まとめ
- 動画は「映せるもの」、漫画は「映せないもの」を見せるのが得意。得意な中身が違う
- 動画は、撮影日の調整と社員の出演が前提になりやすい。漫画は撮影が要らず、取材が要る
- 迷ったら、撮影・出演・日程の制約が少ないほうを1本だけ作る
- 現場の迫力が売りなら動画、考えや過去が売りなら漫画が選びやすい
- 給与・休日などの条件は求人票に任せる。動画と漫画は、その手前で興味を持ってもらう役割
迷っている社長は、まず「自社の一番の魅力は、目に見えるか、見えないか」を、紙に1行で書いてみてください。見えるなら動画、見えないなら漫画。この1行が、始める形を決める近道になります。



