求人票のビフォーアフター|応募が来ない求人票の直し方と書き方例

求人票を出しているのに、応募が来ない。掲載期間を延ばしても、反応は変わらない。そんなとき、書き方が悪いのだろうかと考える社長は多いと思います。
この記事は、建設・製造・運送・介護などの中小企業で、採用を社長自身が担当している方に向けて書きました。原因の切り分け、修正前と修正後の例、言い換え、法律のルール、チェックリストを順に整理します。
目次
応募が来ないのは、書き方だけの問題ではない
書き直す前に、まず状況を確かめます。原因が違えば、直す場所も違うからです。
求人の数と、求職者の数
ハローワークに出されている求人の数を、求職者の数で割ったものが「有効求人倍率」です。厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」から、職業別の数字を抜き出しました。
職業別の有効求人倍率(令和8年8月・常用、パート含む)
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」参考統計表の原数値です。ハローワークに登録された求人と求職者の数なので、民間の求人媒体は含みません。
建設躯体工事は8.25倍、事務は0.37倍と、職業によって大きく違います。倍率が1を超えると、求職者の数より求人の数のほうが多い状態です。建設や運送、介護の求人は、求職者に選ばれる側に回りやすい、と読めます。ただし、ハローワークの数字で、目安の一つです。
求職者は、何を基準に選んでいるか
求職者が応募先を選ぶ基準も、調査で公表されています。エン・ジャパンが運営する「エン転職」の調査(2025年10月1日〜11月3日、有効回答2,162人)では、求人選びの軸の上位は次の3つでした。
求人選びの軸(エン転職の調査、2025年)
エン転職「求人選びの軸について(2025年版)」の上位3項目です。転職を考えている人への調査で、新卒や未経験の人だけの結果ではありません。
いちばん多いのは「自分にできそうか」です。給与や休日より前に、自分が働く姿を想像できるかどうかで、読み進めるかが決まっているとわかります。
応募が来ない理由は、3つに分けられる
応募が来ない理由は3つ
見つけてもらえない
検索したときに出てこない、職種名が伝わらない、求人を載せている場所に求職者がいない、といった状態です。
開いても読まれない
文字が詰まっている、どの会社にも書ける言葉ばかりで、自分のことと思えない状態です。
読んでも決められない
休日、残業、入社後の流れなど、判断に必要な情報が足りず、応募まで進めない状態です。
管理画面に閲覧数と応募数が出るなら、それで切り分けられます。閲覧数が少ないなら1つ目、閲覧はあるのに応募がないなら2つ目か3つ目です。書き方で直しやすいのは2つ目と3つ目です。
求人票のビフォーアフター:修正前と修正後
直し方の基本は、言葉を飾るのではなく、事実を一つ添えることです。例はすべて架空の会社のものです。
文字が詰まった求人票を、読める形にする

画像のように、項目は入っていても、すべてが同じ大きさの文字で続く求人票は、スマートフォンでは数行で離れられがちです。
項目ごとに見出しを付け、1つの文を短くします。そして、求職者がいちばん知りたい仕事の中身と条件を、上に持ってきます。会社の歴史は、その後ろで十分です。
「アットホーム」「やる気のある方」の言い換え表
悪い言葉ではありませんが、どの会社も同じ言葉を使うので、何も伝わりません。直すときは、根拠になる事実を一つ添えます。
表は横にスクロールできます
| 修正前の言葉 | 修正後の例(架空) | 添えた事実 |
|---|---|---|
| アットホームな職場です | 社員は12人。昼は事務所で全員そろって食べます。月1回、現場ごとに振り返りの時間があります | 人数、習慣 |
| やる気のある方歓迎 | 朝7時30分に現場へ集合できる方。普通自動車免許(AT限定可)があれば応募できます | 時刻、必要な資格 |
| 未経験でも安心 | 入社後の3か月は先輩と2人1組で動きます。1人で現場に出るのは、本人と先輩が話し合って決めてからです | 期間、育て方 |
| 風通しがよい | 毎週金曜の夕方、15分間、社長と社員で今週の困りごとを出し合います | 頻度、場面 |
| 頑張った分は評価します | 前年度は、資格を取った社員3人の手当を月5,000円上げました | 実績 |
POINT言い換えのコツ
- 人数・時刻・期間・頻度など、数にできる事実を一つ入れる
- 事実がなければ、その言葉は書かない
- 実際にないこと、実績にないことは書かない(虚偽の表示になります)
仕事内容のビフォーアフター(土木施工の例)
仕事内容は、作業の名前を並べるだけでは、自分にできそうかが判断できません。書くのは、1日の流れ、誰とどこで何を使って働くか、最初の3か月で何をして何をしないか、の3つです。
<例: 土木施工スタッフの求人(架空の会社)>
修正前
【正社員募集】土木施工スタッフ(未経験歓迎)。公共土木工事の現場作業をお任せします。最初は先輩の補助からスタートし、少しずつ仕事を覚えていただきます。アットホームな職場です。
修正後
【正社員募集】土木施工スタッフ(道路・河川の工事)。普通自動車免許があれば未経験から応募できます。
- 1日の流れ: 7時30分に事務所に集合し、車で現場へ。8時から作業、12時に昼休み、17時に現場を片付けて事務所に戻ります。
- 最初の3か月: 先輩と2人1組で、資材の運搬、測量の補助、現場の清掃を担当します。重機の運転は、3か月後から講習を受けて始めます。
- 現場の人数: 1つの現場に5〜8人。年齢は20代から60代までです。
修正後は長くなりましたが、読み手が想像できる場面も増えています。問題は長さではなく、情報の種類です。
職種名も、探される言葉に直す
求職者は、職種名で求人を探します。社内で「現場スタッフ」と呼んでいる仕事は、「土木施工スタッフ(道路・河川の工事)」のように、中身が見える形にします。ただし、目立たせるために実際と違う名前を付けてはいけません。厚生労働省の「募集・求人業務取扱要領」は、実際の業務の内容と著しく離れた名称を使ってはならないとしています。
応募はあるのに、合う人が来ないとき
応募数は足りているのに、面接で話が合わない、辞退が多い。この場合は、書き方が足りないのではなく、伝える中身がずれていることがあります。
CHECK合う人が来ないときの見直し
- 仕事の大変な面(きつい時期、体力が要る場面)が書かれているか
- 必要な資格や経験が、「歓迎」でぼかされていないか
- 応募した人や辞退した人に、理由を聞いたか
- 掲載している媒体は、来てほしい人が見ている場所か
給与・休日・固定残業代の書き方
給与は、幅の理由まで書く
「月給22万〜35万円(経験・能力を考慮のうえ決定)」では、自分がいくらになるのか分かりません。入社時の例を、経験の違いごとに書きます。
- 未経験で入社した場合の月給
- 経験3年の場合の月給
- 資格を持っている場合の手当
昇給や賞与は、実績があるときだけ書きます。
固定残業代の書き方は、3点を必ず書く
注意固定残業代の書き方
厚生労働省の資料では、時間外労働の有無にかかわらず一定の手当を支給する「固定残業代」を採用する場合、求人票に次の3点を書くよう求めています。
- 基本給は、固定残業代を除いた額
- 手当の名称と、「何時間分の時間外手当として、いくら支給する」という内容
- その時間を超える時間外労働分の割増賃金は、追加で支給すること
基本給に含めて、時間数も書かない表示は認められません。
<固定残業代の書き方の例(架空・数字は例です)>
修正前: 月給25万円(残業代込み)
修正後: 基本給21万円+固定残業手当4万円(20時間分の時間外手当として支給)。20時間を超えた分は、割増賃金を追加で支給します。
募集情報に書く所定労働時間を超える労働が月45時間を超えていると、法令に違反するおそれがあると、厚生労働省は示しています。時間数は実態に合わせて決めます。
休日と残業は、数と実績で書く
「週休2日制(現場の状況による)」とだけ書くと、実際の休みが読めません。年間の休日日数、土曜出勤が月に何回か、夏季・年末年始の休みの日数、休日出勤になったときの扱い(振替か手当か)を書き分けます。残業も、「月平均20時間」のように数で書きます。忙しい時期と、そうでない時期が分かれるなら、その時期も一言添えます。
入社後の流れ・社員の声・写真
入社前の不安は、入社後の姿が見えないことから来ます。時間の順に見せると安心材料になります。
入社後の流れの例(架空・会社に合わせて書き換える)
- 初日事務所で挨拶と安全の説明。作業着と道具を渡します
- 1週間先輩と2人1組で、現場の見学と清掃から始めます
- 1か月資材の運搬と、測量の補助を担当します
- 3か月面談で本人と先輩が振り返り、次にやる仕事を決めます
- 半年資格の講習を受けられます
社員の声は、「応募する前に何が不安でしたか」「入ってみて想像と違ったことは何でしたか」と聞き、良い面だけにせず本人の言い方を残します。顔や名前を出すときは同意を取ります。写真は、仕事の場所、道具、休憩する場所、一緒に働く人を載せ、イメージ写真には「イメージ」と添えます。
条件では表せない現場の空気は、求人票の外で伝える方法もあります。漫画を使う場合の向き不向きは、採用マンガとはで解説しています。
法律で書かなければならないこと、書いてはいけないこと
求人票には、法律で決まったルールがあります。厚生労働省の公式資料にもとづいて、社長が押さえておく点をまとめます。
求人票に最低限書く項目
職業安定法にもとづき、求人票や募集要項には、労働条件を明示しなければなりません。厚生労働省のリーフレットが示す、最低限の項目は次のとおりです。
| 項目 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 業務内容 | 雇入れ直後の業務と、将来変わる範囲(2024年4月から) |
| 契約期間 | 期間の定めの有無。有期なら更新の基準と、更新上限の有無(2024年4月から) |
| 試用期間 | 期間と、その間の条件が違うならその内容 |
| 就業場所 | 雇入れ直後の場所と、将来変わる範囲(2024年4月から) |
| 就業時間・休憩・休日 | 始業と終業の時刻、休憩時間、休日 |
| 時間外労働 | 有無と、月平均の時間数など |
| 賃金 | 月給・時給などの区分。固定残業代があるときは3点 |
| 加入保険 | 雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険など |
| 受動喫煙防止措置 | 屋内禁煙など、就業場所の措置 |
| 募集者の氏名または名称 | 会社名。派遣として雇うときは、その旨 |
2024年4月から、「変更の範囲」と「契約を更新するときの基準」が加わりました。厚生労働省の記載例では、変更の範囲を「製造業務を除く当社業務全般」や「本社および全国の支社、営業所」のように書きます。「諸般の事情を総合的に考慮」といった抽象的な書き方ではなく、「勤務成績により判断」のように具体的に書くことが望ましいとされています。
書面の交付による明示が原則ですが、求職者が希望すれば、電子メールでも構いません。条件を途中で変えるときは、変更の内容を、確定後できるだけ早く明示します。募集を終えたら、速やかに求人情報も終了します。
書いてはいけない表示
虚偽や誇大な内容を書いてはいけません。厚生労働省の取扱要領が挙げる、誤解を生じさせる表示の例は次のとおりです。
- 関係会社と混同されるように書く(実際に雇う会社を明確にする)
- 雇用の募集と、請負の募集を混同させる
- 賃金を、実際より高額であるかのように書く
- 職種や業種に、実際の業務と著しく離れた名称を使う
虚偽の広告を出したり、虚偽の条件を示して募集したりした場合、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています。悪意がなくても、実態と違えば問題になります。
年齢と性別
注意年齢と性別で、募集を限ってはいけない
募集や採用で、年齢制限を設けることは、原則としてできません。厚生労働省のリーフレットは、「年齢不問」と書いても、年齢を理由に応募を断ったり、面接で年齢を理由に不採用にしたりすれば法に反する、としています。
求めているのが体力や経験なら、年齢ではなく、業務内容と必要な能力を書きます。たとえば「長距離トラック運転者」なら、「資材(50kg程度)を上げ下ろしする業務のため、持久力と筋力が必要です」と書く形です。
性別も同じで、男女雇用機会均等法により、性別を理由にした差別は禁止されています。「男性歓迎」「女性向きの職種」といった表現や、「ウエイター」のように性別が分かる職種名は、問題の例として厚生労働省が示しています。業務に必要がないのに、身長・体重・体力を条件にすることも、問題になります。
年齢制限には、法律が認める例外がいくつかあります。条件が細かいので、例外にあたるかどうかは、最寄りのハローワークや労働局に確認してから書きます。
見直しのチェックリスト
CHECK公開前のチェックリスト
- 職種名は、世間で通じる言葉で、実際の仕事と合っているか
- 求職者がいちばん知りたいこと(仕事の中身、休日、給与)が、上のほうに書かれているか
- 「アットホーム」「やる気のある方」といった言葉に、事実が添えられているか
- 1日の流れと、最初の3か月が書かれているか
- 給与は、経験の違いごとの例が書かれているか
- 固定残業代があるなら、3点(基本給、時間数と金額、超過分の追加支給)が書かれているか
- 年間の休日日数と、残業の月平均が数で書かれているか
- 変更の範囲(業務・就業場所)と、契約更新の基準が書かれているか
- 年齢や性別を限る書き方、性別が分かる職種名になっていないか
- 写真や社員の声が、実際の職場と人のものか
公開したら、1〜2週間ごとに、閲覧数と応募数を見ます。閲覧数が少なければ職種名と掲載場所を、閲覧数はあっても応募がなければ、仕事内容と条件を見直します。1回に1か所ずつ直すと、どの変更が効いたのか分かります。
時間がないときは、職種名、冒頭の数行、給与と休日、入社後の流れ、写真と社員の声の順に直します。上から順に直すだけでも、求人票の読みやすさは変わります。
よくある質問
「アットホーム」は書いてはいけませんか
禁止された言葉ではありません。ただ、それだけでは何も伝わらないので、人数や習慣のような事実を一つ添えます。事実が思いつかないときは、その言葉自体を外して構いません。
固定残業代を書かないと、どうなりますか
基本給に含めて、時間数も書かない表示は認められていません。募集の段階で、基本給、時間数と金額、超過分の追加支給の3点を書きます。迷うときは、ハローワークや労働局に確認してください。
求人票に、大変な面まで書いてよいですか
書いたほうが、入社後のズレは小さくなります。応募の数は減るかもしれませんが、合わない人が先に離れるので、面接や定着の手間が減ります。
まとめ
求人票が読まれない原因は、見つけてもらえない、読まれない、読んでも決められない、の3つに分けて考えると、直す場所が見えます。求職者が選ぶ軸の上位は、自分にできそうか、希望の条件があるか、給与です。この3つに、具体的な数と場面で答える求人票にします。
- 「アットホーム」などの言葉は、人数・時刻・期間・頻度のような事実を一つ添えて書き換える
- 仕事内容は、1日の流れと、最初の3か月で書く
- 給与と休日は、幅の理由と数まで書く。固定残業代は3点を書く
- 法律で決まった明示事項と、禁止されている表示を確認する
次の一歩は、今出している求人票を、チェックリストで1つずつ確認することです。全部を書き直さなくても、職種名と冒頭の数行を変えるだけで、反応が変わることがあります。



